Veeam V10a新機能 AWS S3への自動バックアップデータ保管
2020年版ガートナーのマジッククアドラント【データセンターバックアップ/リカバリーソリューション部門】で4度目のリーダーに選ばれたVeeam社のバックアップソフトウェア製品であるVeeam Backup&Replicationが、この度“V10a”へとアップデートされました。
この最新ビルドであるVeeam Backup&Replication “V10a(10.0.1.4854)”は、2020.07.23に公開されており、クラウドネイティブスナップショットを使用するイメージバックアップで、AWS EC2インスタンスが取得可能になったことや、NASやFileServerのファイルバックアップに対応するなど数多くの機能拡張と修正が行われています。
その中でも今回は、ScaleOut Repositoryに追加された新機能を紹介したいと思います。
今までのScaleOut Repositoryの階層管理ではポリシーベースでパフォーマンス層の旧データをCloudオブジェクトストレージで構成されるキャパシティ層へアーカイブするといったものでした。今回追加されたオプション機能により、パフォーマンス層に保存されたバックアップデータをキャパシティ層のクラウド上に自動複製することができるようになりました。
これにより、バックアップデータの保管ロケーションはローカルサイト+クラウドアーカイブだけではなく、ローカルサイト+AWS S3オブジェクトストレージなどのオフサイト自動保管が可能となりました。
この機能追加により、今までバックアップデータを念のためLTOテープなどへ二次保管しオフサイト保管をしていたり、NASなどへコピーしていた人達にとっての代替え手段としてクラウド環境へバックアップデータ保管も選択肢となったのではないでしょうか。
該当機能を試してみたので紹介していきましょう。
目次[非表示]
1.Veeamスケールアウトリポジトリーについて
スケールアウトバックアップリポジトリ機能は、Veeam Backup&ReplicationのEnterpriseエディションとEnterprisePlusエディションで利用できます。
キャパシティ層は、ひとつのオブジェクトストレージで構成され、クラウドベース、またはオンプレミス環境のオブジェクトストレージリポジトリで構成します。
*対象となるオブジェクトストレージ
・S3-compatible のオブジェクトストレージリポジトリ
・Amazon S3
・Microsoft Azure Blob Storage
・Microsoft Azure Data Box
・IBM Cloud Object Storage
2.実施環境について
ここで実施した環境は以下のものを使用し実施しました。
用途 |
製品・サービス |
保護対象 |
vSphere 6.7 |
バックアップサーバー |
Veeam Backup&Replication V10a |
オブジェクトストレージ |
Amazon S3 Bucket |
ScaleOut Repositoryの階層管理と自動複製イメージは以下の図の通りです。
3.環境作成の手順について
環境概要を簡単に紹介します。
以下のステップで、動作確認のためにバックアップ環境を作成しました。
*今回使用した環境では保護対象をvSphereとし、1次保管はオンプレサイトのストレージに、2次保管となるオブジェクトストレージはAmazon S3 Bucketを使用しました。
3-1.リポジトリの追加
オブジェクトストレージ(Amazon S3)をVeeamサーバにてリポジトリ追加を行います。
(VeeamサーバやAmazon S3 Bucket等の準備は完了しているものとします。)
①Veeamの管理コンソールからレポジトリ追加を選択します。
②オブジェクトストレージを選択すると、「Amazon S3」が表示されるので、Amazonアカウント情報や登録するBucket情報などを入力し追加ウィザードを完了させます。
3-2.スケールアウトリポジトリの作成と設定
次にスケールアウトリポジトリを作成し、オブジェクトストレージにバックアップデータを自動コピーさせるための設定を行います。
①Veeamの管理コンソールからスケールアウトレポジトリを追加します。
②リポジトリ階層管理で、ローカルサイトのレポジトリ(ストレージ等)をパフォーマンス層に、追加したAmazon S3リポジトリをキャパシティ層に設定しスケールアウトリポジトリを作成します。
③無事に作成されるとスケールアウトリポジトリに登録したストレージが表示されます。
④作成したスケールアウトリポジトリのプロパティから「Capacity Tier」の中の以下のオプション項目を有効化し保存することで、自動コピーの設定が完了します。
☑Copy backups to object storage as soon as they are created
3-3.バックアップと自動コピー
ここまでで、新規バックアップが実行されAmazon S3への自動コピーが行われる準備ができました。
ここでアーカイブ機能について触れておくと、これまでのパフォーマンス層からキャパシティ層へのアーカイブ機能は、日数や容量を設定するアーカイブ方式でしたが、永久増分や逆増分といったバックアップ方式によって移動対象に制限がありました。
v10からバックアップ方式に左右されず最新のリストアポイントデータをアーカイブする即時コピーオプション機能が追加され、パフォーマンス層で変更が検知された際にオブジェクトストレージへ即座にアーカイブされるようになりました。
実際にバックアップが行われ、自動コピーが実行されるとどのような状況となるのか見ていきましょう。
◆実施シナリオ
・vSphere6.7上のVM(Windows Server2016):約13GBのデータ容量のフルバックアップを実施し新規バックデータを保存
・その後、Amazon S3へ自動コピーがどのように実行されるかを確認
◆結果
・1次バックアップのローカル保存はVMイメージ容量13GBが圧縮され約7.5GBのバックアップデータとなり、そのデータを自動的にコピージョブとして動作しAmazon S3へ複製したことを確認できました。
・その際のジョブ名は後ろにOffloadと付与されたジョブで動作していました。
・自動コピーセッションが開始されるとバックアップファイル(.vbk、.vib、.vrb)ごとにデータブロックとメタデータを抽出しコピーを実行していました。
参考までに、以下に動作中の管理コンソールのキャプチャを載せています。
①ジョブの進行具合はこのような感じです。
②自動コピージョブが実行され、Amazon S3へコピーされています。
③Veeamの管理コンソールのオブジェクトストレージのリストにリストアポイントが作成されています。
④S3バケットにも自動コピーで保存されている新規フォルダが作成されています。
補足:自動コピーでAmazon S3バケットに作成されるディレクトリ構造は右図のようになっており、Veeamサーバーがキャパシティ層の管理に使用するために作成されるフォルダは、通常のリポジトリとは違った構造となっています。
3-4.Amazon S3リポジトリからのリストア
ここまでで、新規バックアップが実行されAmazon S3への自動コピーが問題なく実施されることを確認できました。続いては、Amazon S3リポジトリからのリストアについてはどうでしょうか。
リストア方法としては、直接Amazon S3からリストアする方法やキャパシティ層であるオブジェクトストレージへアーカイブされたバックアップデータから間接的にリストアする方法があります。
直接Amazon S3からリストアする手段や間接的にキャパシティ層であるオブジェクトストレージへアーカイブされたバックアップデータからリストアする手段があります。
それぞれのリストア手段について確認していきたいと思います。
3-4-1.Amazon S3からの直接リストア
Amazon S3リポジトリからvSphere環境へ直接ファイルリストア(Restore guest files)を行います。
①バックアップリソースからS3へコピーされたVM選択のメニュー内の”Restore guest files"を選択します。
②ファイルレベルリストア(FLR)エクスプローラを起動することで、該当ファイルのリストアを実行します。
3-4-2.キャパシティ層からの間接リストア
キャパシティ層からの間接的リストア手段についていくつかご紹介します。
①キャパシティ層(Amazon S3)にオフロードされたデータを該当ジョブごとにパフォーマンス層へコピーで戻す場合に使用するダウンロード機能で、データをダウンロードします。
②オブジェクトストレージリポジトリからデータファイルを別の新しいオブジェクトストレージリポジトリへのコピーも可能です。
③別環境のVeeamサーバーへ保存済みのオブジェクトストレージのアーカイブデータを接続する場合は、今までのリポジトリスキャンは使用せず、「Repository Tools」の「Import Backup」機能を使うようになりました。
Amazon S3リポジトリを接続しオブジェクトストレージのアーカイブデータをインポートするとホームの「バックアップ」リストにバックアップデータが復元され、リストアポイントが表示されます。
4.まとめ
今回、Veeam Backup&Replication V10a(スケールアウトリポジトリ)の追加機能であるオブジェクトストレージへの自動コピー機能ですが、AWS S3 Bucketへのデータ複製も問題なく動作することも確認できました。
また設定も容易にでき動作も自動で実行されるため、オブジェクトストレージを利用するバックアップソリューションのひとつとして考えてもよいのではないでしょうか。