導入事例

ライセンス・サーバ台数を徹底的に抑制
安全・安価なテレワーク実現のために、スズデンが選んだ「VDI」とは

スズデン株式会社 様
業種:商社
事業規模:100~500人
課題:リモートワークを行いたい
   セキュリティを担保したい
   PCのOSやハードウェアを入れ替えたい

「Windows 7」は既にサポートが終了しているものの、業務用PCのOS更新が終わっていない企業は少なくない。多くのPCを一気に更新するのは容易ではないからだ。

新型コロナウイルス感染症の拡大に直面し、PCのOS更新に取り組む最中にテレワーク環境の整備に追われたIT部門もある。従業員が利用するPCを効率的に構築、管理し、さらにセキュアなテレワーク体制を実現したい。それを実現する方法の一つがVDI(仮想デスクトップインフラ)だ。

FA(ファクトリーオートメーション)機器を取り扱う専門商社のスズデンは、ノート型のシンクライアントとVDIを組み合わせて、営業担当者がセキュアにモバイルワークできるITインフラを迅速に展開していた。このITインフラがあったことで、新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークにスムーズに移行できた。今後の内勤者向けPCでもテレワークをしやすくするために、全社的なVDIへの移行を決めた。なぜ同社はVDIを選んだのか。どのような導入効果が得られたのか。同社担当者に聞いた。

課題

  • 600台の大規模PC端末入れ替え作業の効率化

  • 社会情勢の変化に対応できる柔軟なシステムの構築

  • リモートワーク時のセキュリティと生産性向上の両立

解決

 VDIにすることでPC入替作業の効率化と柔軟なシステムを実現

 ライセンスコストを60%削減。VDI基盤とネットワークを強化する事でレスポンス強化、生産性を向上

 シンクライアントとデータSIMでの専用通信を採用。テレワーク時のセキュリティも確保

従業員PCのOS更新とモバイルワークのセキュリティ確保にVDIを採用

スズデンは「もの造りサポーティングカンパニー」として、主にFA機器や産業機械、電設資材、情報通信機器などを扱っている商社だ。顧客のニーズに合った幅広い商品を迅速に提供することで、ものづくり現場の課題解決を支援している。

スズデンのビジネスを支える基幹システムをはじめ、各種ITシステムの構築と運用、さらに従業員が利用するPCなどのハードウェアの管理を実施しているのが、同社の業務システムセンターだ。業務システムセンターは、従業員PCのOSとして利用していたWindows 7のサポート終了を機に、2018年からOSやハードウェアの更新を検討していた。

「全社で600台ほどのPCを運用しており、全てを一気に入れ替えるのは難しい状況でした。またデスクトップPCが多く、営業担当からはモバイルワークのために新たにノートPCを導入してほしいと要望がありました」と言うのは、スズデン業務システムセンター センター長の矢口 誠氏だ。

ノートPCを貸与して社外で使えば、新たなセキュリティ対策が必要となる。大規模なPCの入れ替えを効率的に実施し、同時にモバイルワークのセキュリティも確保する。

そのためにスズデンが選んだのが、VDIの導入だった。サーバにデータやアプリケーションを集約するため、多くのPCを1台1台セットアップする手間を削減できる。配布する端末をシンクライアントにすれば、万が一の紛失時に情報流出を防げる。

スズデンは初めに、営業担当者が利用するPCをノートPCに替え、仮想デスクトップを導入することにした。仮想デスクトップを配信するためのVDIソフトウェアには「VMware Horizon」を、ITインフラにはオンプレミスのHCIとハイパーバイザー「VMware ESXi」を選んだ。

スズデン株式会社
業務システムセンター
センター長
矢口 誠 氏

選択の理由の一つに、コストメリットがある。

スズデンは約200台の営業担当者向け端末からVDIの利用を始めて、他部署にも広げることを計画していた。その際に同社が注目したのが、VMware Horizonで実現可能な「サーバVDI」というVDIの運用形式だ。

サーバVDIでは、仮想マシンのゲストOSとしてサーバOSの「Windows Server」を稼働させる。エンドユーザーはWindows 7や「Windows 10」といったクライアントOSではなく、仮想マシンで稼働するWindows Serverのデスクトップにリモートアクセスする仕組みだ。

クライアントOSのWindowsをゲストOSとする一般的なVDIの場合、リモートアクセスに必要な「Windows Virtual Desktop Access」(VDA)というMicrosoftのライセンス料金が高額になる傾向がある。サーバVDIはVDAのライセンスが不要なため、コストを大幅に抑えることができるのだ。

VMware Horizonであれば、ホストOSとしてWindows Serverの「Datacenter」エディションを利用できる。Datacenterエディションの料金は物理サーバのCPUソケット単位のため、そこで仮想マシンを幾つ稼働させても追加のOSライセンスは必要ない。エンドユーザーの増加に合わせて仮想マシンが増えてもコストは増加しない。

「VMware HorizonでサーバVDIを実現することは、長い目で見たときにコストメリットが大きいと判断できました」と矢口氏は言う。
同社はクライアントOSを利用した場合と比べライセンス料を約60%削減できた。

もう一つVMware Horizonを評価したポイントが、VDIの画面転送効率の高さだ。

VMware Horizonには独自の画面転送プロトコル「VMware Blast Extreme」があり、これを使えばネットワークの状況に合わせて画面転送のパケット量を最適化できる。これによって通信量が減少し、クライアントPCのレスポンス向上と通信コストの削減が可能になると考えた。

Windows Serverを利用することで、クライアントOSよりも簡単に仮想デスクトップを構成できたという(図)。

「Windows 10などのクライアントOSにはゲームなど業務に関係のないアプリケーションが入っており、それらを削除して業務に適した仮想デスクトップに調整するのはかなりの手間です。Windows Serverなら、仕事に不要なアプリケーションがほとんど入っておらず、簡単に仮想デスクトップを構成できます」(矢口氏) 

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全社的なVMware HorizonとノートPCの導入を計画

第1弾となる営業担当者向けVDIの構築は2019年10月に始まった。2020年3月までに200台のノートPCを配布し、順次仮想デスクトップに移行した。

この導入プロジェクトの最中に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生する。スズデンが感染対策のためテレワーク体制に移行する中で、ノートPCで仮想デスクトップを利用していた従業員はスムーズに移行できた。一部の内勤者にもノートPCを貸与し、仮想デスクトップを使って暫定的にテレワークができるようにした。

この経験を踏まえ、第2弾の内勤者向けのPC入れ替えでは、当初予定していたデスクトップPCではなくノートPCと仮想デスクトップの組み合わせに方針を変更した。感染症対策や大規模な災害が起きたときの事業継続などを考慮し、全ての従業員がテレワークできるようにすべきだと判断したのだ。

2020年8月から開始した第2弾の約200台の仮想デスクトップ化は2020年12月に終了予定だ。

スズデンには他にもおよそ200台のPCがある。これらのPCは物流倉庫など、社外との接続がほとんどない場所で利用されている。仮想デスクトップ化については、今後の動向を見て判断する。

「基本的にはVDIを拡張し、全社で仮想デスクトップを利用したいと考えています」と矢口氏は言う。

モバイルワークに適した情報漏えい対策を実施

主に営業担当者に配布したノートPCはモバイルワークでのセキュリティを確保するために、OSしか入っていないシンクライアントとなっている。シンクライアントだけでは「Microsoft Office」のようなアプリケーションはもちろん、Webブラウザさえ動かない。VDIに接続しなければ利用できないのだ。

アプリケーションが一切入っていないため、サーバからデータをダウンロードして利用することはできない。データ転送はVDIの画面情報のみだ。アプリケーションが利用するデータは全てサーバで処理される。これもデータ転送量の削減に貢献している。

端末内にデータが残らないことに加えてHDDを暗号化しているため、紛失しても情報漏えいなどの心配はない。

利用するネットワークも工夫している。接続にはデータSIMを用い、テレワーク時に自宅や外出先のインターネット回線などは利用しない。SIMでの通信は業務時間帯に制限することで、回線の無駄な使用の抑制と働き過ぎの防止にもつなげている。

「配布したノートPCは、業務以外には使えない端末です。IT管理者もエンドユーザーも、シンプルで使いやすい環境が出来上がりました」と矢口氏は言う。

入れるだけでなく実際の使い方を考えてVDIを構成

VMware Horizonを使ったVDIの導入は、以前から付き合いのあったデジタルテクノロジーがサポートした。

同社はスズデンの既存システムやネットワークを熟知しており、的確なアドバイスによってVDIの構築期間の短縮にもつなげている。特に、VDIとネットワークの構築からセキュリティ対策まで一括でサポートできたことの評価は高い。ばらばらのベンダーに頼むとベンダー間の調整が発生し、時間とコストがさらにかかったはずだ。

デジタルテクノロジー ITインテグレーション部システムデザインユニット1の有川は、「VDIを使えるようにするだけでなく、エンドユーザーがどういった使い方をするかを考えて設計しました」と言う。

テレワーク時のセキュリティ要件が高かったことから、PCをシンクライアント化してSIMでの専用通信を採用した。セキュリティ対策しつつ快適に使えるように、VMwareHorizonを活用する提案となった。

「障害時の対策や将来的なSaaSの利用などを考慮し、事前準備には十分に時間をかけました。回線やゲートウェイも冗長化し、高いレスポンスと可用性を確保できるようにしています」とも有川は言う。

VDIの導入は「現場の営業担当が最も喜んでいます」と矢口氏。社外に安心してPCを持ち出せ、レスポンスも悪くないと評価が高い。VDIの利用が、営業担当者のモバイルワーク時の生産性向上にもつながっている。

デジタルテクノロジー株式会社
ITインテグレーション部
システムデザインユニット1
ユニットマネージャー
有川 浩二

スズデンは、既に一部のシステムをクラウドで動かしている。今後はクラウドの利用がさらに増えることになる。

矢口氏は「今後は既存システムを順次クラウドに移行することを考える必要があります。BCP(事業継続計画)を考慮してオンプレミスを組み合わせて、最適な構成で運用できるようにしたいと考えています」と展望を話す。

同社は仮想デスクトップを使いこなして新しい働き方を実現しつつ、将来的にはITシステムを最新化して、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みを進める意向だ。

スズデン株式会社


所在地:東京都港区芝浦3丁目4番1号 グランパークタワー13F
URL:https://www.suzuden.co.jp/

1952年12月設立。FA(ファクトリーオートメーション)のリーディング商社。「もの造りサポーティングカンパニー」というビジョンのもと、幅広い取扱商品を迅速に提供する事で、あらゆる業種・業態に対応。自動化、省力化、生産性向上、品質、安全、環境改善等、ものづくり現場の課題解決に取り組んでいます。

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